「原爆の生き証人」

「原爆の生き証人」藤田マリアさんの訃報がとどきました。享年95歳。藤田マリアさんは広島に原爆が投下された瞬間、市電に乗って運転手のすぐ後に立っていたため奇跡的に閃光を浴びずに助かりました。それ以来、その時の体験を語りながら核兵器禁止を訴えつづけてこられたのです。また住んでいる地元の日系特別養護施設「敬老」(北米シャトル市)で美容師として残りの人生を無料奉仕に捧げてこられました。吉永小百合さんとテレビ出演された時の印象はときくと、「さすが女優さんです。とてもきれいで感じのいい方でした」と話してくれました。エクアドルに来られた時には、HCJBのスタジオで対談させていただきましたが、「原爆投下、あの時・・・」と題したこの番組は、1995年NHK国際放送海外日本語放送コンクールで奨励賞を受けました。

藤田さんが奉仕しておられる特別養護施設「敬老」をたずねたことがあります。普通なら隠居する身でありながら、クシとハサミを持った手でお年寄りの人たちにやさしく語りかけて散髪していた藤田さんのことばがいまも私の胸にやきついています。

「本当に不思議なんですよ。今日こういう状態にあることは。死んだはずの自分がこうも長く生かしてもらってんじゃから。何かお役にたたんじゃいけん思ってね。いろんな奉仕をさせてもらってます。寝るときゃ毎晩神さまにお礼を言ってね。朝は今日も出来るだけのことをしますからお守りくださいってお祈りします。神さまがいっしょじゃから毎日がたのしいですよ。」

藤田マリアさんの追悼番組として、1995年制作HCJB今週のハイライト「原爆投下、あの時・・・」を2008年10月4日に放送します。

(米国シカゴ在住)
 尾崎一夫