アンデスの峰、湖畔のシカゴ、さらにアリゾナ砂漠へ


HCJB日本語放送のスタジオが二転三転して近くアメリカ西南部のアリゾナへ移転します。40年間住みなれたアンデスの高山都市エクアドルをはなれてミシガン湖畔のシカゴ移ったのが7年前。今度はロッキー山脈の南端、砂漠と渓谷に囲まれたアリゾナ州第二の都市ツーサン(Tucson)が新天地です。メキシコ国境までは車で南下すると一時間弱で着きます。人口100万人のうち36%がヒスパニックまたはラテン系でスペイン語を話すときいて、まるでアンデスへふたたび舞い戻って行く感じです。

移転予定は6月ですが、その前にいちど家族で現地をたずねてみようと春休みを利用して出かけることにしました。家長のデイブはすでに今年2月から単身赴任でアリゾナに住んでいます。そこでシカゴに残っている子供4人と母親と私の計6名が冬まだ去りやらぬシカゴを後にしてまだ見ぬ地にむかうことになったのです。

早朝5時。シカゴ空港まで送ってくれる人がなかなか来ず、暗がりを照らして角を曲がるヘッドライトの灯りがみえると「来た、来た」と子供たちは大喜びして「遅い、遅い」という愚痴もどこへやら、高速道路は渋滞もなくすいすいでしたが、空港は春休みの初日とあってチックイン・カウンターは長蛇の列でした。そうなるのではないかと持込荷物だけにしていたので、Eチケット専用台で予約番号をうちこむだけで搭乗券は入手できたのですが、最後になって、サム(小学2年)が途中で手をふれた途端に券がひっかかってしまいました。悪いことをしたと陰にかくれるサムにクリスチーンが姉としてアドバイスのひとこと。「プリンターは印刷がおわるまで手を出してはだめ!」

テロ対策で空港の警備は以前よりいっそう厳しくなっていました。持ち物の検査はもとより、ボディ・チェックも係員が手でふれるだけではなく、さらに中味まで見通すための全身透視機が登場していました。靴を脱ぎ、ポケットを空にし、時計もベルトもはずしてゲートを警報音なしに無事すりぬけても、そのあとにもうひとつ検査が加わったのです。等身大の鏡のような前に立たされ、両手をあげて「はい、息を吸って、そのまま止めて」というのは胸のレントゲンですが、それと同じように全身をスキャンされる検査です。家族は大人も子供をみんなホルドアップして撮影され、私は最後でした。「大丈夫だったパパ?(孫たちは私をパパ。父親をダディと呼んでいます)だって、最近手術したばかりで、横腹の傷口にはホッチキスの留め金が26ケもあるのでしょう。ピッ、ピッと鳴ったんじゃないの?」まさにその通り。抜糸前だったら、敏感な金属探知器で私はストップをかけられ、裸にされて調べられるところでした。


通関を終えてシカゴを時間どおり飛び立った私たちは、コロラド州デンパーで飛行機を乗り換えてその日の昼過ぎには目的地のツーサン空港に降り立つことができました。「ようこそアリゾナへ」と私たちを迎えてくれた巨大サボテンの前で記念撮影をしようとその前に並ぶと、サムはサボテンをづくづくと眺めわたしながら「これ本物?」と信じられない様子で目を丸くしていました。

アリゾナ・レポートは5月8日(土)に放送する予定です。



2010年4月8日 HCJB日本語放送担当 尾崎一夫